ある1コマ

「私の言ったことが聞けなかったら、治療中止ですよ。この前の状態を観て奥さんとあなたが、私に申し出たでしょう。もう中止したいって、状態がよくなって安易にまた始めたい、そんな簡単なものじゃないんですよ」どこかで聞いた声、畳み掛けるその論法私の好奇心をそそった。
 そう紛れもなく私のかつての主治医の声だった、治療している人(私の後輩?)への注意だった。たまたま病院へのお見舞いに行った時の1コマ。
 廊下にいた私と眼が合い、出てきた時に「お久し振りです、その節はお世話になりました」と話したら、「ちょっとわからなかったよFさんとは、卒業していった人のことは忘れてしまうよ」と笑みを返してくれた。
 これからも肝炎患者のために頑張って下さいと心の中でお願いしその場を離れた。